2013年7月26日金曜日

研修生活の最後

留学もいよいよ最後となりました。

最終週は地元料理、タルトフランベ(アルザス地方のピザ)を家族で御馳走していただき、 最後の日にみんなにご挨拶。

同僚たちからの、
「時間が経つのは本当に早かったね、君と仕事ができて本当に楽しかった。これからもお互いに連絡を取り合おう。日本に行ったら案内してくれよな!。君と奥さんと息子さんの幸せを願っているよ。また会おう。」
という別れの言葉の数々にはもちろん感激しましたが、それ以上に、
こういった挨拶が、みんなボタンを押したようにスラスラ出てくるのには驚きます。

滞在中に感じたていたことですが、小さいころから人付き合いの経験が豊富で、何回もこのような場面・挨拶を繰り返しているに違いありません。恥ずかしながら、こちらは「モア オッシー」のボタンでしか対応できませんした。


私の研修、妻の研修、息子の小学校、
ボスを筆頭に、自分たち家族のようなトリッキーな存在(移民)を受け入れてくれたフランスは本当に寛容な国でした。
妻の研修先の先生方、息子の友達家族にも大変お世話になりました。


11月にストラスブールで学会発表する予定なので、そのときまでアラポッシャンです。




オペ室からの眺めも最後


大聖堂にも最後にご挨拶

2013年7月25日木曜日

銀行口座を閉じる

こんな項目が必要かどうか分かりませんが一応。

フランスではなぜか銀行手続きにいちいちランデブーが必要です。

「口座を開設したい」→「ランデブーしましょう」→別の日、「追加でこれらの書類が必要です」
「追加書類をもって来たので担当者に渡して欲しい」→ランデブー
電話にて「さらに書類をもってきてもらいたいんですがランデブーはいつがよろしいでしょう?」
「1000ユーロの小切手を作ってほしい」→ランデブー
「500ユーロおろしたい」→「今日は充分な現金の準備がないからランデブー」
「銀行口座を閉じるのでランデブーしたいんですが。」

最後にやっと言えました。

ネットバンク対応のカードを作ってしまえばもう少しだけ楽だったかもしれません。


2013年7月23日火曜日

フランスから日本への引っ越し

留学生活も最後の日が近づいてきました。

日本からオーストリアを経由して、フランスにたどり着いた荷物のほとんどを、開くことなくノーバウンドで再び日本に打ち返しました。(段ボールにつまっていた"ムシューダ"の山が、夫婦間に溝を作ったことは言うまでもありません...)

本は1箱5kgまでを上限に梱包すると、postから1箱13ユーロで送れました。
実行していませんが、ドイツのpostから送った方が安いらしいです。

衣類などはクロネコヤマト パリ支店に国内便で送り、日本へ転送してもらいました。
集荷サービスもしていますが、300ユーロ以上かかると言われたので諦めました。
家具付きフラットに住んでいたので、家具は送っていません。

こちらでは何をするにも、直接電話しないとメールだけでは全然話が進みません。
ぜーんぶ日本語で、丁寧な対応。やはり安心です。

2013年7月18日木曜日

横隔神経剥離

肋間神経剥離に続き、横隔神経剥離もロボットを使ってトライアルすることができました。
横隔神経を腕神経損傷後の神経移行に使う手技に応用するためのブタでの予備実験です。

横隔神経には、motor fiberが多い。ということが、横隔神経を好んでdonorとして使う人たちの意見なのですが、ロボット云々ではなく、剥離手技自体は肋間神経採取の方がはるかに簡単だと思いました。臨床成績に大きな違いがないのであれば、肋間神経を使いたいです。



心膜に沿って下降する横隔神経を剥離

2013年7月9日火曜日

ラマダンが始まりました!

勢いよく!マークを付けてみましたが、
僕にとってはテンションが上がりも下がりもしないイベントです。

ストラスブール自体はカトリック色の強い地域ですが、
フランスにはたくさんのイスラム教徒がいて、職場の同僚も半数はムスリムです。

月暦を使っているので、毎年ラマダンの期間は移動します。
今年は今日から。
ラマダンは太陽が出ている間は食事、水分禁止なので、日の長いこの時期にスタートは厳しいです。
ちなみに今日は3:41日の出~21:38日の入りです。
日の出前に起きることすら大変です。

ドバイから来ている研修医も、フランスは母国よりも緯度が高いので、
「この長さのラマダンは未体験ゾーン」と言って、開始前から怯んでいました。

いざ始まってみると、
「あれ?ラマダン明日からじゃなかったけ?」と開始日をトボケテつまみ食いしようとしてみたり、
「口のまわりにパンくずが付いてるぞ。隠れ食いしただろ。」と、からかって見たり、
なんだかお祭りみたいに楽しんでいる印象です。

コツは日の出前の朝食を食べ過ぎないこと、
喉が渇くので、甘いものは控えることだそうです。
ご参考まで。



1か月間の日の出、日の入りの時間が記載されているラマダンカレンダー
ちなみにイスラム系散髪屋で配られるロゴ入り宣伝用カレンダーです。

2013年7月6日土曜日

フランスで本格ラーメン


フランス パリのオペラ座周辺は日本食屋が多く並ぶ地区です。
パリにもラーメン屋は数多くありますが、3年ほど前に本格ラーメン屋がオープンしたと聞き、
パリに行ったついでに寄ってきました。
 
日本にいるかのような錯覚を与えるには十分な店内。
店員さんが時折発する、「らっしゃいやせー!ありがとやしたー!」
の言葉は、地元フランス人客を寄せ付けるつもりのない意思の表れでしょうか。
在仏日本人の癒しの場となり、いつも行列ができているそうです。
 

 
なりたけ。パリです。

2013年6月12日水曜日

DupuytrenのPIP拘縮

Dupuytren拘縮の治療は、18G針でcordを経皮的に切離しています(基節部でも積極的に)が、
PIP拘縮が強いものや、再再発例のサルベージでは、
PIPの関節面を骨切りして軽度屈曲位でdesisしています。

2013年6月5日水曜日

橈骨茎状突起切除

橈骨茎状突起切除は関節鏡視下で行っています。

通常と異なるのは、掌側からシェーバーをいれて操作することです。
3、4portalからいれた鈍棒をFCRの裏側に一度ぶつけて、すぐ尺側皮下に突出し、尖刃で掌側portalを作ります。

香港のグループはこの作業をノンターニケットにして橈骨動脈を触れながらしているようです。

背側関節面がきれいに見えるので、安全にportalが作れれば、有用だと思います。

2013年5月27日月曜日

近位列切除3点セット

PRCは20分台で終わってしまいます。

鉗子で骨をつまむか、写真のブーション("コルク抜き")と呼ばれる骨頭抜去器みたいな道具を月状骨に穿ってen blocに摘出しています。



別撮り。
ちなみに大菱形骨切除でも重宝しています。




キーンベックなのでブーションは使わず。
月状骨がポロッとしてしまいましたが、
一応en bloc。大きいハサミでジョキジョキいきます。

2013年5月16日木曜日

肋間神経剥離

Strasbourgから車で1時間半ほど北上したナンシーというところに、
動物実験施設があります。

本日、ナンシーでブタを使ったロボット支援下肋間神経剥離術を行いました。

これまで、腕神経叢損傷に対する尺骨神経や腋窩神経をtargetとしたロボット支援下神経移行術では、CO2ガスでworking spaceを確保していました。 

多くのケースではretractorがないために展開が困難なことが多かったのですが、胸腔内の操作はspaceが十分にあり、剥離操作がはるかに快適でした。


コストの問題がありますが、
将来、ロボット支援下肋間神経移行術が有益な手技になると思います。

2013年5月8日水曜日

陳旧性SL解離

DISI変形を来しているような陳旧性SL解離に対しては、
フランスのMathoulin先生が考案した、手関節鏡下靭帯縫合術をしています(PMID:21602075)。
鏡視下にSL靭帯と背側関節包を縫縮するエレガントな方法なのですが、
なかなか縫合のtensionが難しそうです。

DISIが戻ってしまったり、逆にきつく縫いすぎて手関節の掌屈制限がでてしまったりしています。

 
 
 
 

2013年5月3日金曜日

SL由来のガングリオン

痛みを伴うガングリオンは、手関節鏡視下手術をしています。
SL由来の背側ガングリオンはmidcarpal portalからのほうが、valveにアプローチしやすいようで、ボスは多用しています。

2013年4月28日日曜日

春のおとずれ

今年の冬は40年ぶりに日照時間が短かったらしく、
なかなか日光を感じられません。


先日、ようやく春らしい日がおとずれました。
うれしいので散歩中の写真をup



 
 

 
 
 
 
そして異国でもしっかり花粉症がおとずれました



 
 

 
 
 

2013年4月22日月曜日

人工CM関節のsalvage

人工CM関節のsalvageとして大菱形骨切除をしていました。

切除はもったいないからもう1段階がんばってみよう。
ということでpyrolytic carbon インプラントを人工CM関節failure後の2例に最近使いました。
論文的には否定的な意見もあるようですが、実際の長期結果が気になります。




2013年4月17日水曜日

手根管開放術後の再発例

手根管開放術後の再発例に対しては、
横手根靭帯と神経周囲の癒着剥離をして、
再癒着予防の人工スペーサーを入れています。




2013年4月8日月曜日

留学学生

研修していると、ヨーロッパ他国からの留学生と出会います。
これまでにブルガリア、スロベニアからの学生が1か月間研修しに来ました。

ヨーロッパ各国間には交換留学制度があり、
テストにパスすれば、奨学金をもらって比較的簡単に海外研修ができるそうです。

もともと、医師免許を取ってしまえば、ヨーロッパのどこの国でも働くことができるので、
当然の制度なのかもしれません。

レジデントの給料が国によって2倍ほど変わるので、国家間経済格差による医師不足の問題が生じているそうです。

ちなみに海外就労思考の強い彼らの"将来働きたい国 NO.1"は適度な収入と少し長い余暇が得られるスペインだそうです。フランスは忙しいからあまり人気がないそうです。

2013年3月31日日曜日

夏時間

神様が復活するため、この時期フランスでは3連休。
アルザス地方のみ、ドイツ時代の慣習が残り、4連休です。

アルザスは行政と宗教とのつながりが強いため、フランスの他の地域よりも2日(クリスマスと復活祭)キリスト教関連の祝日が多いそうです。

また、通常は司祭さんのお給料はお布施から賄われるそうですが、
アルザスでは行政からお給料が支払われます。
その他、教会の修繕費なども行政が負担しているそうです。

本日から時間が夏時間に変更。
見かけの日没が1時間長くなりました。



夜の7時半でも夕焼けが残ります

2013年3月23日土曜日

ドイツのケール

ストラスブールからライン川を挟んで隣接するドイツの街にケールという所があります。





トラムとバスで30分かかりますが、車があればストラスブール中心部から15分で着きます。川沿いに広い公園があるのと、日用品が安いので、地元の人たちがよくお出かけしています。我が家も週末のんびりスポットとして利用しています。



仏独 友好の懸け橋
手前がドイツ 反対側がフランス

高台からの景色
矢印はストラスブールの大聖堂
 
街の人はドイツ語とフランス語のどちらでも対応してくれます。
僕には関係ありませんが...

2013年3月18日月曜日

腱の癒着予防

手関節レベルの腱縫合時に、コラーゲンシート(COVAORTHO)を腱縫合部に巻きつけています。
ややbulkyなので、末梢には使いにくそうです。


 

2013年3月13日水曜日

中手骨骨折

中手骨骨折の治療は、
K-wireを遠位、近位から1本ずつ刺入し、
外でクランプして固定するオリジナルの器具を使っています。
基本的には手術にしています。



 




早期からの運動を許可しています



骨折線が遠位よりの場合は、こうしています。


 

2013年3月6日水曜日

手根管開放術

手外科全体では1週間に30件近く手術しています。

中環指間の延長線上
1.5cmの皮切

手術時間は4,5分です。

2013年3月1日金曜日

DIP関節固定

DIP関節固定は、
openよりも低侵襲
靭帯や腱の展開がないので、安定性が良く、癒合不全が起こりにくい
ということを理由に

SBI社のPercuFIX™ Percutaneous Fixationを使って、軟骨を削ることなく指先から経皮的刺入するのみです。

no more nonunionなので個人的には真似できませんが、外来で診るXp経過では確かに癒合しています。


コンプレッションスクリュー。尾側は指でパキッと折れる。

2013年2月28日木曜日

アキレス腱のエラスト所見と病理の関係

インスブルックでの最初の仕事は
アキレス腱のエラストグラフィーの所見と実際の病理は関連があるのか?
というテーマでした。

フレッシュカダバーのアキレス腱をB-modeエコーとエラストグラフィーで観察し、
腱の変性をどの程度描出できているのかを調べました。

プロジェクト自体は、自分が参加したときには終わりかけていて、完全な後乗りですが、無事に形になりました

Achilles Tendon Assessed with Sonoelastography: Histologic Agreement Radiology 121936; Published online February 28, 2013, doi:10.1148/radiol.13121936

2013年2月23日土曜日

手関節鏡研修コース(ベーシック)

昨年の11月に続き、丸2日かけて手関節鏡のコースがありました。
今回はベーシック、ということで、ポータルの位置や器具の使い方などが重点的に教えていただきました。

加えて、スワンソン、CM人工関節、橈骨遠位端骨折用プレートのworkshopがありました。
12月21日のブログ内容と別意見になりますが、
デモンストレーターに、「CM人工関節は9年は大丈夫、10年で500例やってます。」という先生がいらっしゃたので、今度見学にうかがわせてもらうことにしました。

 
 



2013年2月12日火曜日

ストライキ好きですね

こちらで生活してから、医者とバスと農家のストライキを見ました。

今度はうちの息子が通う小学校の先生たちがストライキ。

サルコジさんが減らした授業時間(ゆとり教育?)をオランドさんが教育改革で増やそうとしたけど、教員の給料が変わらないのが争点。
ちなみにサルコジさんが授業時間を減らした時は給料据え置きだったらしい。

息子のクラスの担任の先生はグレーヴィスト(ストライキします)なので、これからスポットでお休みの日があるそうです・・・

ノングレーヴィスト(ストライキしません)の先生が担任のクラスでは普段通り授業があります。

親御さんも騒ぎません。
フランスなので。

2013年1月29日火曜日

マイクロ実習

月に2,3日のペースでマイクロ実習をしています。

ミミズの胴体、ネズミの血管で練習していますが、
日本の糸コンニャクが、安価で清潔な練習材料にならないものかと、同僚がdiplomaのテーマとして試行錯誤中です。



絵具を使ってリークテストをしています。

試行錯誤に煮詰まった同僚は、「終わったら糸こんにゃくをあらゆる調理法で食べてやる!」と燃えています。


2013年1月23日水曜日

Green ?

手の外科の教科書の話題になりました。

フランスでは若手医師は「Tubiana」という教科書をバイブルとしているそうです。
(さらにこちらの施設では、ボスが編集している教科書を読みながら診療しています。)

6年生以上のチーフはもちろんGreenを知っていますが、
インターンの先生はGreen? です。


 
 


日本の津下先生の教科書みたいなものだ。と言われて、妙に納得しました。
舟状骨骨折を診て、Schernberg分類とやらを使ってディスカッションをしているのを聞いていると、文化の違いを感じます。

2013年1月14日月曜日

職員食堂メニュー(ストラスブール)

こちらでの定食は1ユーロ弱!
財布にやさしくで、ボリュームたっぷり。
とても重宝しています。

アルザスなので、ややドイツ・オーストリアに近いコンテンツです。
ワインは出てきませんが、ノンアルコールビールは飲めます。









2013年1月7日月曜日

フランスで専門医になるまで


フランスには約30の医学部があり、すべて国立です。一大学に約2000人が入学します。学費は学年ごとに上がりますが、年100190ユーロしかかりません。

海外からの学生も多く、アルジェリア、セネガル、モロッコ、などフランス語圏を中心に様々だそうです。
医師として研修しにくる同僚も、レバノン、ボスニア、サウジアラビア、などから来ていて、フランスが北アフリカやイスラム諸国と関係が親密であることを感じます。

 大学1年生の終わりに大きな試験があって、200300人ほどに絞られます。
落ちた人は留年して再チャレンジするか、看護師、助産師、理学療法士、作業療法士など別の道を目指します。

 6年修了時に国内共通試験を受けます(全国で毎年7,8000人)。その時の成績順に、自分の行きたい科と地域を選ぶことが可能です。医師レベルの地域格差が生じるのが問題だそうですが、医師の偏在は緩和されそうです。納得がいかなければ留年して再チャレンジします。

 ここで、ジェネラリストになるのか、専門医を目指すのか道が分かれます。
 
ジェネラリストは卒後3年ほどのレジデント研修を経て、開業します。

専門医を目指す医師は、病院でインターンと呼ばれ、5年間の研修を積みます。自分の行きたい科が手の外科であっても、この5年間は外科系といった大きなくくりの中で、地域の病院を6か月ごとにくるくる回ります(整形外科のほかの分野や、形成外科など)。この時期に1つ、2つ論文とdiplomaを取得して専門医に備えます。インターンが終わると試験を受けて晴れて専門医になります(ここでM.D.になる)。専門医として開業する道もあります。専門医になった後は、自分で勤務したい病院の専門ポスト(チーフレジデント)にapplyします。手術実績や論文を提出して選抜されるそうですが、コネクションで決まることもしばしばあり、若手医師たちはアンフェアーなシステムだと感じているみたいです。チーフレジデントとして3年間ほど専門病院で研修を積むと、私立の病院で勤務医として転職したときに給料交渉ができるようになります。また、公的保険外診療外来が開けるようになります。(セクター2医師と呼ばれる)

セクター2医師には公的保険外診療(上限あるが自分で診療費の設定が可能、医師指名料の意味合いが強い)の収入が加算されます。見学していると、外来ブースでそれぞれの医師が開業しているような感じです。
なので、外来診療に対するモチベーションが高いです。患者さんが多くても決して愚痴を言いません。むしろ祝日や学会などで自分の外来日が無くなると収入が減るので、手術日を削ってでも外来を開いて、たくさん診察しています(公的保険外来と保険外診療外来の日数は決められている)。
しかし、都心部の病院では医者が患者を選んで、お金持ちしか診察しなくなってきていることや、私立病院では不要な手術が多く行われているという弊害もあるそうで、出来高払いの混合診療を見直すべきだという意見も高まっているそうです。